本年1月1日から施工された改正相続税法により、
いよいよ大増税時代の到来となりました。
なかでも、今回の改正の柱となる「基礎控除の引き下げ」、
「相続税率の見直し」は、課税対象となるひとが増えるだけでなく、
資産家の方に、さらなる税負担を強いるものといえます。
特に財産の大半を不動産が占めている方は要注意です。
今回の増税により税負担が増えれば、
納税資金がショートする危険性が高まります。
それでなくとも、不動産の相続については、
従前から納税資金対策は大変な課題となっていました。
被相続人が生前に対策をしていなかったため、相続人が財産を相続した後、
納税資金捻出のため、大切な自宅を売却したり、預貯金を失ったりと、
結果的にマイナスになってしまい本末転倒という例も少なくありません。
実際に私たちがお受けする相談のなかで、もっとも相談件数が多く
トラブルになる可能性が一番高いのが不動産です。
次に挙げる3つの質問について考えてみてください。
「お持ちの不動産について、現在の評価額を知っていますか?」
「相続計画について、相続人全員の意思確認は出来ていますか?」
「改正相続税に沿った相続対策について専門家に相談してみましたか?」
1つでも「ノー」があるなら、「争続」に発展する危険性があるといえます。
トラブルを避け、円滑な相続を実現するためには、適切な専門家への相談と、
改正税法を見据えた新たな相続計画を立て、上記3つの問いにも「イエス」と
答えられる準備をしっかりと整えてください。
以下に1つ事例と対策法を記しましたのでご参照ください。
【事例ケース】人気の住宅街にある自宅の場合
長く住み続けてきた街の人気が高まるのは嬉しいことです。
ただ、その分地価が高くなれば、相続税課税評価額も上昇しますから、
相続では思わぬ負担が生じることもあります。
横浜市に住むCさんのケースでは、次のようなごく普通の住まいについて、
相続税の問題が発生してしまいました。
概要 | 人気の街に建つ自宅 所在地:神奈川県横浜市 / 用途地域:第一種住居地域 相続税評価額:1億円 / 相続人:妻と子供2人 |
備考 | 長年住んできた自宅だが、最近人気が出たため、地価が高騰している。 高額の相続税が支払えず、将来妻が住む場所を失ってしまう事が心配。 |
問題点 | ・これまで地価の高騰を想定したことがなく、相続税を支払うだけの預金がない。 ・他にも資産があり、相続税計算の適用税率が高い。 |
解決策 | 「小規模宅地の特例」を活用する |
相続税について関心をお持ちの方なら、
「小規模宅地の特例」という言葉をどこかで耳にした事があると思います。
それほどポピュラーなのは、利用できる条件が整えば、
本特例による節税効果が非常に大きいためです。
相続財産の評価が大幅に下がり、相続税の負担が軽減されます。
まさに不動産相続対策の切り札といえる特例です。
1億円にのぼるCさんの自宅土地の相続税評価額も、
小規模宅地の特例を適用すると、 約4,720万円に抑えられます。
実に5,280万円も減額することができるのです。
概要 | ・被相続人が住宅として使用していた土地は課税対象額が80%減額されます。 ・被相続人の配偶者、被相続人と同居していた親族が相続した場合、 330㎡までは 80%の減額となります。 |
相続税対策では、賃貸用建物を建てるなど、多額の投資や一定の費用を必要とするものが、大半です。
そんななか、この「小規模宅地の特例」による節税は、新たなコストを要しません。
ローコストでこれだけの効果を上げる節税法は他にありませんから、是非利用したいものです。
今回は「小規模宅地の特例」を事例に挙げ、対策を解説しましたが、
ひとくくりに不動産といっても、各不動産の状態やご家庭の事情はさまざまです。
前述した対策以外にも、状況によっては有効に活用できる手法は多々あります。
相続診断士
ファイナンシャルプランニング技能士
川西 竜介(かわにし りゅうすけ)